不妊治療中の方や選択的シングルマザー、同性カップルの方など、精子提供を検討されている方は多くいらっしゃいます。
しかしその反面、精子提供の場ではトラブルも少なくありません。
今回は、『こうのとりあしながプロジェクト』の運営責任者が、精子提供にまつわるトラブルや、同プロジェクトにおける安全面の強みなどを解説します。
目次
インタビュアーの紹介
I LOVE BABY 代表
ダンサーからバーの店長、そして貢献活動へ。異色の経歴、キーワードは“縁”
これまでの経歴を教えてください。
かなり異色の経歴かもしれません(笑)
大学卒業後、28歳までプロダンサーをやっており、その後32歳でバーの経営を始め、40歳でバーを畳みました。
『I LOVE BABY』は、そのときにご縁のあった、ある方からのお誘いがきっかけで立ち上げました。
『こうのとりあしながプロジェクト』は人とのご縁によって生まれたのですね。
そうですね。
社会貢献活動には若い頃から興味があったのですが、なかなか携わる機会がありませんでした。
そんななか、バーを畳んだあとに、「よかったらこんな活動をやってみませんか?」とお声がけいただけたものですから。
バーの経営の経験を多少なりとも活かせるのではないか、と思ったのもあり、是非! ということでプロジェクトの準備を始め、2020年の4月に本格的にサービスを開始しました。
自分のなかでは、ダンサーも、バーも今の活動も、根っこは同じで。
「ご縁があったものは大切にしたい」という考えだったからこそ始められたのだと思っています。 それで言うと、『こうのとりあしながプロジェクト』のサービスは、人と人の“ご縁”のある種究極系ともいえますよね。
SNSを用いて個人で精子提供活動をされている方もいますが、やはり個人間での精子のやり取りはトラブルやリスクもあります。
ですから、法人のサービスとして、私どもがサポートしていくことが大切なんです。
「子どもが欲しい」という切実な想いを抱いている方に対し、安全が守られた状態で精子を提供して、幸せな気持ちになっていただく。
こんなふうに、ご縁を紡いでいけたらいいなと思って活動しています。
切実な思いに付け込む、悪質な個人提供者たち
世の中における精子提供の現場では、やはりトラブルが多いのでしょうか?
「性行為を迫られた」「事前に聞いていた情報と、実際のドナーの情報が違う」「精子から感染症を発症した」……など、挙げたらきりがありません。
私の経験則では、SNS上で精子提供をうたって活動している男性のうち、8割以上は女性の身体目的だと思っています。
特に悪質なのは、事前の話では精子を器具に入れて渡す、いわゆる“シリンジ法”だったはずなのに、いざ会ってみたら言葉巧みに誘導され、身体の関係をもってしまった……というものです。
この話だけ聞くと「どう考えてもおかしいのだから、断ればいいのに」と思うかもしれません。
しかし、精子提供を求めている方はみなさん、藁にもすがる思いなんです。
そんな状態で、急に「やっぱり性行為をしたほうが、本来の方法なのだから妊娠確率は高くなるよ」なんて言われたら、求めに応じてしまっても不思議ではありません。
そのような、女性の身体を目的にしている人が、持病や感染症の有無をはじめとする、健康な赤ちゃんを生むうえで大切な情報を、偽りなく申告しているとはあまり思えないですよね。
精子は本来、見知らぬ個人同士でやり取りできるものではない
このようなトラブルに巻き込まれないためには、どうすればよいのでしょうか。
個人間で精子を取引しないことですね。
先ほどもお話ししましたが、個人で精子提供を行っている方は、全員とは言いませんが性行為目的が非常に多いです。
そして、もし本当に善意から活動している方だったとしても、個人で安心かつ安全に精子を提供するのには限界があると思っています。
新しい命を誕生させるために精子を提供するというのは、本来ならば責任と覚悟をもって向き合わなければならない行為ですよね。
そのためにはまず最低限、健康状態の検査が必要ですし、さらに精子の渡し方や、妊娠後に通う病院はどこがよいのかなど、とにかくいろいろなことに気を配らなければなりません。
果たして、個人で活動している人がそれらをすべて熟知しているのか。……正直、個人でカバーするのは現実的ではありませんね。
その点、法人サービスであれば、一定の安心がありますね。
なので、もし精子提供を受けたいと思ったら、まずは「法人として活動している組織かどうか」を基準に依頼先を選ぶことを強くおすすめします。
私たち『I LOVE BABY』も、責任感をもって活動しているということの、ある種の証明として法人化したという一面もあります。
徹底的に「依頼者ファースト」のサービス体制
『こうのとりあしながプロジェクト』の安全面での強みを教えてください。
まず、ドナーが全員、精神疾患や、がんをはじめとする病気の検査を済ませており、陰性証明をお見せできるという点です。精子を提供するのであれば、本来なら当たり前のことですよね。
現在登録している24人のドナーは、極めて厳しい審査をクリアしてプロジェクト参画に至っているため、精子の質はまず間違いないと思っていただいて結構です。
また、受精の方法としては、クリニックをご紹介したうえでの体外受精のみとしています。 シリンジ法と異なり、医者のもとで受精卵を培養して、もっとも質のよい胚を選ぶので妊娠の可能性が高いですし、衛生面も安心です。
当然、性行為を迫られて依頼者様が怖い思いをするような心配も一切ありません。
依頼者様が安心して赤ちゃんを授かることができる体制が整っているのですね。
そうですね。こういった社会貢献活動を行うには、とにかく安心してご利用いただけるための仕組みを作り、信頼いただくことが何よりも大切ですから。
「安心して利用できる」という点では、依頼者様のプライバシーももちろんお守りします。 そもそも私どもは、サービスご利用に際して依頼者様の本名やご職業をはじめとする個人情報はできるだけいただいておりません。
心身ともに優れたドナー。まさに奇跡の出会い
ドナーの皆様は、とても健康でいらっしゃるんですね。
I LOVE BABYが提供しているドナー全員、ご本人だけでなくドナーのご家族の皆様も含めて健康なんですよ。
皆様、持病がなく、健康で長生きの家系です。
もちろん、健康状態だけでなく、ドナーの皆様は人間性も素敵ですよ。
穏やかな雰囲気で、まさに「人柄がいい」という言葉がピッタリといいますか。
努力家で、教養もある方々なので、皆様有名大学を卒業されており、現在は立派な経営者としてご活躍中です。
不思議なことに、大きな成果を成し遂げている方というのは心身ともに健康体なんですよね。 このレベルの好条件が整っている精子ドナーは、ほかではなかなか見つからないんじゃないかな、と自負しています。
どのような背景で『こうのとりあしながプロジェクト』に参画されたのでしょうか。
皆様、同じような経緯ですね。
プロジェクトを立ち上げるきっかけとなった方からのご紹介です。
「お子さまが欲しい方のために、安心・安全な精子提供活動を始めたいので、ご協力いただけませんか」と相談したところ、ご快諾いただきました。
どの方も、「困っている人を助けたい」という奉仕の気持ちがとても大きく、子どもが大好きなんです。 「この方ならドナーをお願いできるな」と確信したので、お三方にドナー登録を正式にお願いしました。
一人でも多くの笑顔の“誕生”に立ち会い、縁を紡いでいきたい
最後に、不妊治療や精子提供をお考えの皆様に、メッセージをお願いします。
「子どもが欲しい」という願いをもっている方がたくさんいらっしゃるのに対し、本当に安心・安全が守られた状態で精子を受け取れる機会はそう多くありません。
むしろ、その気持ちにつけ込む悪質な提供者が潜んでいるのが、残念ながら実情です。
個人間で精子を取引して、トラブルに巻き込まれてしまう方を一人でも減らすためにも、私どものような法人が認知と信頼を拡大していかなければならないと考えています。
もし、お子さまを望まれるのであれば、見知らぬ個人間でのやり取りではなく、仕組みが整備された法人サービスを選んでいただきたいと強く思います。
そのうえで私どもとご縁があり、そして可愛い赤ちゃんがお生まれになられれば、こんなにうれしいことはありません。